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「ニコちゃーん。ついてきてよぉ~」 お弁当を片付けながら、懇願する私。 「残念だなぁ。今日は放課後歯医者に行くから、昼休みにしっかり歯を磨かないといけないのー」 とっても残念そうな顔をするニコちゃん。 「無理やり用事作らないで、おねがーい」 「いや、ホント、歯磨きは大変だからねー。じゃあ、残念だけれども見送るわねー」 そう言うと、教室から叩き出されてしまった。 「ほんと、冷たいんだから」 昼休みの賑やかな廊下を抜け、生徒会室に至る。 恐る恐るドアを少し開けて中を覗き込んだ。 「そこに座ってください」 待ち構えるように窓側の椅子に座っている高河君。 勧められるがままにその前の椅子に腰かけ、高河君の靴先を見つめる私。 『ああ、教室に戻りたい……』 「里田さん」 「はい」 慌てて顔を上げて高河君を見た。 眼鏡越しに見える高河君の表情を見る限り、特に怒っているわけではなさそう。 「その前髪、凄く斬新なんだけれど、わざとですか?」 前髪を見つめる高河君の視線が、突き刺さって痛い。 「わ、わざとじゃないよ。 朝、風紀検査って気付いて、慌てて切ってさぁー。 今日帰ってから切り直すよ」 なんか、言い訳するみたいにシドロモドロになっちゃった。 「今日、月曜日だから美容室休みだけれど、また自分で切るつもりですか?」 はい、切ります、切ります。 切りますからこの場から早く帰らせてください。 私はコクコクとうなづいた。 「里田さん、今日自分で切り直したら…」 「はい、切り直します」 「いや、お前が切り直したら、前髪、無くなっちまうよ」 コトリ…… 高河君は眼鏡を外して、横の机に置いた。
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