3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ニコちゃーん。ついてきてよぉ~」
お弁当を片付けながら、懇願する私。
「残念だなぁ。今日は放課後歯医者に行くから、昼休みにしっかり歯を磨かないといけないのー」
とっても残念そうな顔をするニコちゃん。
「無理やり用事作らないで、おねがーい」
「いや、ホント、歯磨きは大変だからねー。じゃあ、残念だけれども見送るわねー」
そう言うと、教室から叩き出されてしまった。
「ほんと、冷たいんだから」
昼休みの賑やかな廊下を抜け、生徒会室に至る。
恐る恐るドアを少し開けて中を覗き込んだ。
「そこに座ってください」
待ち構えるように窓側の椅子に座っている高河君。
勧められるがままにその前の椅子に腰かけ、高河君の靴先を見つめる私。
『ああ、教室に戻りたい……』
「里田さん」
「はい」
慌てて顔を上げて高河君を見た。
眼鏡越しに見える高河君の表情を見る限り、特に怒っているわけではなさそう。
「その前髪、凄く斬新なんだけれど、わざとですか?」
前髪を見つめる高河君の視線が、突き刺さって痛い。
「わ、わざとじゃないよ。
朝、風紀検査って気付いて、慌てて切ってさぁー。
今日帰ってから切り直すよ」
なんか、言い訳するみたいにシドロモドロになっちゃった。
「今日、月曜日だから美容室休みだけれど、また自分で切るつもりですか?」
はい、切ります、切ります。
切りますからこの場から早く帰らせてください。
私はコクコクとうなづいた。
「里田さん、今日自分で切り直したら…」
「はい、切り直します」
「いや、お前が切り直したら、前髪、無くなっちまうよ」
コトリ……
高河君は眼鏡を外して、横の机に置いた。
最初のコメントを投稿しよう!