3人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもの黒ぶちの眼鏡を外した高河君は、見惚れてしまうくらい綺麗な顔立ち。
……知らなかった。
後でニコちゃんに教えてあげよう。
「ぼっとして、聞いてるのか?」
「は、はい……、では、母に切って……」
「これ持って」
突然、生徒会だよりを渡される。
あ、生徒会が冬休みに地域の子供会にボランティアに行った記事だ。
生徒会って凄いよね、うんうん。
「読んでる場合かよ。早く目、瞑って」
いつの間にか横に立って、私の頭をハタく高河君。
『あれ、高河君て、こんなキャラだっけ?』
何だか上から目線だし……。
とにかく、言われるがままに目を瞑る。
「お前、無防備すぎー」
「え?」
目を開けると、すぐ目の前に高河君の綺麗なお顔。
お顔の横には、
文具ハサミ?
「おらっ。前髪切り直してやるから、紙前に持って、さっさと目瞑りやがれ」
「ええーっ、文具ハサミでーっ、高河君がーっ」
「小学校から使っているハサミだ。安心しろ」
意味のわからない説得に屈して、再び目を瞑る。
ハサミの音が響く。文具ハサミの。
生徒会だよりに、パラパラと前髪が落ちる。
時折、高河君の鼻歌交じりの息が、顔にかかる。
「あの適当に切った斜めを、ここまで出来ればいいか。ほれっ、目開けて見てミィ」
慌てて目を開けた。
目の前に差し出された手鏡を受け取り、恐る恐る前髪を見た。
「あっ、なにこれー」
私が切った斜めとは同じ斜めなのに、同じとは思えない、小洒落た斜め前髪が出来上がっていた。
「ん?斜めバング。気に入った?」
「す、凄いねぇ。気に入ったよ。ありがとう」
「それだけ?」
綺麗なお顔に意地悪な笑みを浮かべて見下ろしてくる。
えーっと……
「こ、今度おごるよ」
「それじゃ、ダメ」
あっ、速攻ダメ出しされたし……。
答えを探るべく、高河君の顔を見上げた。
最初のコメントを投稿しよう!