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話し合って理解はしたが、どうぞと言われても染谷の見てる前で家と同じ様に振る舞うのは遠慮したい。
「あ、そうだ。勇仁が戻ってくる前に、もう一個教えておいてやるよ」
悪戯を思いついた子どもの様な表情を浮かべ、染谷が真琴の耳に口を寄せた。
これ以上何を言われるんだろうかと、真琴は身構えながら耳を傾けた。
染谷が頼んだドリンクを勇仁が持ち帰り、それぞれハンバーガーを食べ終えると店から出た。
染谷とは店の前で別れると、真琴と勇仁は予定していた映画を見るために向かった。
お腹も満たされて気分がいい。後はこの満腹感に負けて、上映中に眠ってしまわないかと心配なぐらいだ。
予定していた映画のチケットが無事に取れれば、アクション物を見る事になる。それならば派手に音を立てるだろうし、迫力の凄さに眠気は直ぐに吹っ飛びそうだ。
「まこ」
映画館へと向かっている途中で、勇仁に呼ばれて顔を向ける。
「さっき、そめやんと何を話してた?」
機嫌のいい真琴とは正反対で、勇仁は機嫌が悪そうにしかめっ面をしていた。さっきというのは、勇仁がドリンクを持って戻ってくる直前の時の話だろう。
「別に、昔の話を少ししてただけ」
「嘘だろ。俺が帰ってきた時、やけに距離が近かった。そめやん、まこの耳元で喋ってたし」
勇仁がやたら気にするのは、自分が戻ってきた時に二人の距離が近いのが原因だろう。
もしかすると、染谷がアプローチしていると思ったのだろうか。本当にそうだったら、あり得なさに笑ってしまいそうだ。
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