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 酔っ払った自分がどういう行動に出るかなんて分からないが、自ら誘ったとは考えにくい。だとすれば、そっちの趣向がある相手にリードされるがまま、真琴はここへ来てしまったのだろう。  一体、誰がこんな事をしたんだ……。  ぶつけようのない怒りが、沸々と真琴の中にこみ上げてくる。  手を握り締めて拳を作ると、感情に任せてぐっと力を込めた。その直後に、再び痛みが走って直ぐに緩めてしまった。  この状態だと、最低でも今日一日は何も出来そうにない。起き上がる事すら億劫だ。  しかし、いつまでもここで寝ている訳にもいかず、極力身体に負担がかからないよう、ゆっくりと起き上がった。  気をつけていても、身体を動かす度に痛みがやってくる。何とかやり過ごして上体を起こすと、隣で布団が膨らんでるのを発見した。  こんな直ぐ傍に居たのに気にも留めなかったのは、自分が相当動揺してたからだろう。  ここを出ていく前に、どんな奴だったのか確認しなければと思った真琴は、相手が被っている布団へと手を伸ばした。  顔を見た所で、ピンと来ないとは思うが、とにかく確かめておきたい。もうこの状況では、相手が女の子であって欲しいという期待すらしなかった。  きっと飲み会に居た誰かだと思うが、真琴の頭には勇仁の顔しか浮かんでこなかった。  緊張から僅かに震える手で布団を掴み、ゆっくりと持ち上げる。  見たかった顔を覆ってた布団が離れていき、徐々に明らかになっていく。その過程に、真琴は無意識にゴクリと唾を飲み込んだ。  これでやっと、相手の顔を確認する事が出来る。  「っ……!!」
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