【5】

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「明らかに二人しておかしいもんな。大体、春木が一人でいるなんて、考えられないしな」  染谷の言う通り、大学でも勇仁と一緒にいる事は無くなった。連絡を取り合っていない為、同じ講義を受けていても今日みたいに姿を見つけられない事がほとんどだ。  二人の様子がおかしいと思われても仕方ないと思って聞いていたが、後半部分は少し疑問に感じて聞いてみた。 「そんなにオレが一人でいるの、珍しいかな?」 「ああ。だって、勇仁が春木を見つけたら、直ぐに飛んで行ってたからな。あの光景も暫く見てねぇな」  少し大袈裟な表現をするなと思ったが、勇仁人が常に側に居た事を言いたかったのだろうと受け取る事にした。  言われてみれば、前は大学に居ると勇仁がどこからともなく現れていた様な気がする。それも、今となっては懐かしいなと思う。 「ずっと、このままかも……」 「なんだ、喧嘩でもしたのか?」 「まぁ……そんな所かな」  独り言の様に呟いたつもりだったのに、染谷の耳にも届いていた様で、問いかけられてしまった。少し言葉を濁して答えた真琴は、同時に数日前の出来事を思い出す。  大学で移動している途中、偶然にも勇仁の姿を見かけた。その時、お互い確かに目があった筈なのに、勇仁が直ぐに目を逸らして真琴の前を通り過ぎてしまったのだ。  勇仁が真琴以上にあの日の事を気にしていて、話しかけづらいのは分かった。それでも、あからさまに避けられたのを目の当たりにして、真琴はショックの方が大きかった。 「冗談で言っただけなのに、マジで喧嘩したのか? 珍しい事もあるもんだ。明日は雨かな?」 「染谷、言いすぎ。喧嘩なんて、染谷も勇仁とした事あるだろ?」
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