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「驚いてるけど、傍から見てると分かりやすいぜ。ほら、俺と春木って、二人だけでちゃんと喋るのは、今が始めてだろ?」
「うん」
咄嗟に頭に浮かんだ事をかき消すのに、真琴は必死で頭を振った。その様子を見た染谷は、驚いていると勘違いしているみたいで更に喋り出す。
いつもは勇仁と三人で喋る事がほとんどの為、本人がいない所で染谷の口から勇仁の話を聞くのは新鮮だった。
「今は喧嘩中だからかもしれないけど、前は勇仁がいつも春木に変な事を吹きこまない様にって、目を光らせて見張ってたんだぜ」
思いもよらなかった染谷の言葉に、真琴は再び自分の耳を疑った。まさか、勇仁がそんな事をする筈が無いと、真琴の頭は否定の事ばかりが浮かんでは消えていった。
「ま、春木は気付かないだろうな。勇仁が本人に言う訳ねぇもん」
「けど、何でそんな事……」
未だに信じられなかったが、染谷が嘘を吐いている様子でもなかった為、何を根拠に言ってるのか気になって、問いかけてしまう。
「それは……春木に悪い虫がつかない様にする為だろうな。ま、それだけ春木を大事にしてるんだ。今は喧嘩中だろうから落ち込んでると思うけど、春木が嫌われる事は無いから心配するなよ」
どうやら染谷は、真琴を励ますつもりで色々と話をしてくれたらしい。勇仁と喧嘩してぎくしゃくしてる事で、真琴が落ち込んでるとでも思ったのだろう。
「有難う。でも……」
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