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染谷の親切にお礼を言った。それでも真琴は、今の状態から元の関係に戻れるのかと気にかかった。
「俺のいう事、信じられねぇか? なら、後二つほど教えてやるよ」
染谷の言葉を疑った訳ではなかったが、他にも話してくれる様だったので、無言で頷いた。
「まずな、俺って見た目からして分かると思うけど……堅苦しいのが嫌いでな、対人関係も気楽にいきたいんだ。例えば、人の名前もあだ名か下の名前で呼びたいタイプなんだ」
「へぇ……」
染谷の中でのルールというのだろうか。言われないと分からない些細なこだわりを聞いて、真琴は驚いた。
「女の子は、まあ……別としてだ。だいたい関わりのある同性の奴等は、どっちかで呼んでる。けど……一人だけ、それに当てはまらない奴がいるんだ。誰か分かるか?」
話を聞いていくうちに、あれ? と引っかかる。
「もしかして……オレ?」
聞かれて、真琴の頭に思い浮かぶのが自分しか居なかったから、言ってみた。
「その通り」
正直、染谷が言う関わりのある人物に真琴が含まれているのか自信はなかったが、返ってきた言葉にホッとした。それにしても、この話が勇仁とどう関係があるのだろうと、少しずつ疑問に思い始めていた。
「でな、なんで春木だけ苗字で呼んでるかって言うと、勇仁に注意されたんだよ」
「ええ!?」
予想外の発言が飛び出してきて、真琴は素直に驚いた。
一体、勇仁は染谷に対してどんな注意をしたというのだろうか……。想像が出来なくて、少し聞くのが怖い気もする。
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