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「春木は居なかったから知らないのも当然なんだけど、勇仁が春木を『まこ』って呼ぶから、俺も真似して『まこちゃん』って言った事があるんだよ。そしたら、勇仁にさ『お前は気安く呼ぶな』って、怒られたわけ」
「そうだったんだ……。でも、何で勇仁はそんな事……」
勇仁がそんな些細な事を気にして、注意するのは意外だった。もしかしたら、染谷が大袈裟に言ってるだけではないのかと、つい疑ってしまうぐらいだ。
「さっきから言ってるけど、勇仁にとって春木が大事な存在だからでしょ」
真琴が疑問を口にすると、サラッと染谷に言われて面食らった。
何度も言われると、『大事な』という意味を変に受け取ってしまいそうだ。
「なんか、さっきから染谷、変な言い方するな。大事って……勇仁にとっては、オレも染谷も大事な友達の一人だろ?」
「いやー、そういうんじゃないんだよな……。でもそこは、あんまり俺がどうこういう所じゃないし、その辺は春木の解釈に任せる」
「どういう事?」
聞いても染谷からは、煮え切らない事しか返ってこない。それを聞いた真琴は、ますます頭を悩ませ始める。
「あ! もうこんな時間だ。とりあえず二個目だけ話しとくわ」
わざとらしく時間を気にして言ってきた染谷に、真琴は話題を逸らされたと思った。それでも中断しなかったのは、二つ目とやらが気になったからだ。
「つい数日前にさ、勇仁が俺ん家に来てたから泊めてたんだけど、あいつ……春木の事ばかり気にしてたぜ」
「え……?」
「お前等に何があったのかは、詳しく聞いてないけどな。でも、春木がもう自分と喋ってくれないかもしれないって酔っ払いながら言ってたからさ、これだけは俺の口から話しておこうと思ってな」
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