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 染谷と話した三日後、真琴は勇仁の家の前に立っていた。  勇仁と会って何を話せばいいのか考えてみたが、結局考えが纏まらなないままだった。それならばと、テストがひと段落つく日に勇仁の家に訪れてみようと決めたのだった。  事前に携帯に連絡しようかとも思ったが、避けられる可能性も考えて、連絡を取らなかった。  大学であからさまに避けられた経験が、真琴のトラウマとなってしまっている。あの時の勇仁が脳裏でフラッシュバックすると、真琴の胸が決まってギュッと締めつけられてしまうのだ。  いつの間にか勇仁に対して臆病になってしまった真琴は、少しでも自分が避けられるリスクは回避したいと思った。とは言え、突然訪問した所で、勇仁に避けられる可能性は高いのには変わりない。  目の前のインターフォンを押せば、一旦は顔を出してくれるとは思う。だが、真琴の顔を見た瞬間に、勇仁がどういうリアクションを取るかまでは想像出来ない。もしかしたら顔を見た瞬間、目の前で避けられてドアを閉じられる事だって考えられる。  それでも真琴は、事前に連絡して会ってもらえないよりは、一瞬でも顔を見て会話出来る方を選んだ。  ドキドキしながら勇仁の家のドアまでなんとかやって来たのだが、肝心のインターフォンを押す事に躊躇いが生まれてしまう。  目の前で避けられる覚悟を持つ為に、シュミレーションしてゴクリと唾を飲み込む。  今すぐにでも逃げ出したくなる衝動に耐えながら、覚悟を決めた真琴はインターフォンを押す事に成功した。  押した直後、室内に音が鳴り響くのが聞こえた。これで中に居れば、暫く経ってから出てくる筈だ。
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