【6】

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 しかし、暫くドアの前に立って待っていたのだが、一向に中から出てくる気配がない。  もしかすると、真琴が居ると気付いて居留守をつかっているのでは……と嫌な予感がして、冷や汗が出た。  ついつい悪い方向に考えてしまいそうになったが、出かけていてまだ帰宅していない可能性も残っている。  今日真琴が受けてきたテストは、勇仁も受けている講義だった。テストが始まる前に遠目で勇仁らしき人物を見かけたので、大学には来ていた筈だった。  勇仁は遅い時間の講義を取らない為、あの後に何か受けているとは考えにくい。それならテストが終わったら直ぐに自宅へ帰るだろうと踏んで、真琴も早々と大学を後にして勇仁の家へとやって来たのだ。  少し失念していたのは、勇仁は真琴と違って交友関係が広い為、誰かと大学で喋って残っている可能性があるという事だ。  インターフォンを押した後に物音がしない所からして、まだ帰っていない気がしてきた。  居ないのならドアの前で待つとしても、どれだけ待つ事になるだろうか。  考えるだけで気が遠くなりそうだったが、いつまでここで待つかを決めてしまおうと思いなおした。  とりあえず、一時間だけ待とう。  携帯で時間を確認した真琴は、覚悟を決めると早速ドアに背中をくっつけて、凭れ掛る様にして座り込んだ。  家に居ていきなり出てこられても、気が動転して上手く話せるとは思えなかった。その辺は勇仁と顔を合わせるのが少し伸びて、幸いだと思った。  座り込んで最初の内は携帯で何度も確認して、思ったより時間が経ってない事に苛立ちを感じていた。途中からは気分転換を兼ねて携帯ゲームを立ち上げ、それで時間を潰す事にした。
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