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「なんだよ、急に。まこ、階段じゃ危ないから、暴れんなよ」
「勇仁こそ、手を離せよ。オレはもう、帰るんだから」
勇仁の言葉に一喜一憂させられる自分が嫌で、手を離さない事に八つ当たりしてしまった。
「まこ、分かった。分かったから、とりあえず腕を振るの止めろって」
「勇仁が離せば止めるから」
振り払おうとする腕の動きを、より大きなものにした瞬間、一段降りていた足がバランスを崩し、倒れそうになった。
落ちた時にやってくる痛みを覚悟して、真琴は咄嗟に目を瞑った。
後ろに倒れる筈だった身体は、何かの力が加わって前に倒れて何かにぶつかった。
覚悟してた痛みがやって来ることはなく、一瞬の出来事で何が起こったか理解出来ない真琴は、そろっと閉じていた目を開ける。
開けた所で、視界の多くが遮られていて、よく分からない。
「ったく、言った側から」
それでも近くで勇仁の声が聞こえてきた事と、同時に振動が伝わってくる事から、真琴は勇仁に支えられている事を理解した。
「勇仁……」
危ない所を勇仁に助けられて倒れる事から免れた筈なのに、真琴の胸が早鐘を打ち続けて静まりそうにない。
「まこ、大丈夫か?」
確認で聞きながら、真琴の腰に回されていたらしい勇仁の腕に力が入る。そこで自分が勇仁に抱きしめられている状態だと理解してその瞬間、真琴の顔が一気に熱くなった。
「だい……じょうぶ……」
喋る事すら上手く出来そうになくて、詰まらせながらも何とか答える。
「そっか……良かった」
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