【6】

8/37

745人が本棚に入れています
本棚に追加
/165ページ
 そもそもここへ来たのは、色んな事をハッキリとさせる為だ。それなのに、逃げてしまえばまた同じ事の繰り返しになる。  自分にそう言い聞かせながら、真琴は後に続いて勇仁の家へと入った。 「どうぞ」  招かれて部屋までくると、そういえばここへ来たのは風邪と間違えて連れてこられた以来だったなと思い出す。 「お茶と水しかないけど、どっちがいい?」 「じゃあ、お茶で」  答えると、直ぐにコップに注がれたお茶を渡されて受け取る。受け取る時に互いの指が触れて少し意識してしまったが、勇仁に悟られぬように顔は平静を装った。 「えっと……気になってるから早速聞くけど、まこは俺に何の用だったんだ?」 「あ、その……勇仁と、話を……したくて」  自分の分を持ってきた勇仁が真琴の向かいに座り、直ぐに本題を切り出された。予想はしていたがいざ聞かれると動揺してしまい、言葉に詰まりながらも何とか言う事が出来た。 「俺と何の話?」 「勇仁に……聞きたい事があって。その……オレの家を出て行った時さ、えっと……勇仁が怒った理由が、未だによく分からなくて」  思ってた以上にスラスラと言葉に出来ない事がもどかしくなる。黙り込んだ方がどれだけ楽になれるかと思いながらも、真剣に聞いている勇仁の顔を見て、その考えを頭から消した。  何とか言い終える事が出来て、一息つく為に入れてもらったお茶を口に運ぶ。 「あー……うん。その話は後でするとして、俺もまこに聞きたい事、あったの思い出した」 「何?」
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

745人が本棚に入れています
本棚に追加