【6】

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 勇仁の口から聞かされた事に、思わず目を見開いてしまった。まさか、そんな痕が自分についていると思わなかったし、勇仁にそれを目撃されていたのにも驚いた。 「まこの事、ずっと側で見てきたのに、そんな痕を付ける相手がいるって気付かなくて、すげえショックだった」  勇仁の話を聞きながら、そう言えば……と、あの日の事を思い出す。  確か、寝てしまっていた真琴を起こした時に、勇仁が首元に触れてきた。珍しい行動だっただけに覚えていたが、あれはリンパの腫れを見る為じゃなく、キスマークに触れていたという事か。  しかも、その後にうどんど食べながら、好きな人がいるのかと突然聞いてきた。あの時は、ホテルでの記憶が消しきれず、勇仁といる気まずさから深く考えなかった。  それが話を聞いた今になって、当時の不自然な行動の意味を理解した。そして、あの時から気にしていた勇仁に、真琴も二人でホテルに居た事を言わなければいけないと思った。  何故なら勇仁が気にしているキスマークの相手は、勇仁自身に間違いはないのだから。  酔っぱらって記憶がない間に起こったあの日の出来事をきっかけにして、二人の関係が微妙に変わっていってしまった。  その原因となった事を全て話せば、前の様な関係に戻れるかもしれない。ずっと躊躇っていた事だったが、逆に話す事で解決できるかもしれない。 「勇仁……やっぱ、勘違いしてる。けど、それを聞いて勇仁が言ってるキスマークの相手は、誰だか分かった」 「え?」  不思議な表情を浮かべてる勇仁を見ながら、真琴は言葉を続ける。 「あいにく、酔ってて付けられた記憶は残ってないんだけどな」  深く息を吐いた後、真琴はずっと勇仁に黙ってた事実を話す覚悟をした。 「記憶がないのに、何で相手が分かるんだよ?」 「目覚めたら、ラブホのベッドで寝てたから」 「はぁ!?」
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