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感情的になっていく勇仁との温度差が滑稽に感じたが、それでも事実をちゃんと話す事に意識を集中させる。
ホテルで寝ていた事を口にすると、驚いていた勇仁の目つきが変わった。次に真琴の口から飛び出す名前に、勇仁は更に驚くだろうと想像して、その一瞬だけ口元が緩みそうになって、慌てて引き締める。
「相手は……勇仁、お前だよ」
「っ!?」
案の定、名前を告げた後、勇仁は言葉を発せないぐらいに驚いた。
「え……いつ、だよ? 俺、まことラブホなんて……」
困惑している勇仁の様子を見て、やはり女の子と寝たと思わせたままの方が良かったかもしれないと思った。罪悪感からなのか、その反応が真琴の胸を少し痛めた。
それでも、ちゃんと話すと決めたからには、嘘をつかずに自分が知っている事を話す。
「勇仁がオレを誘った飲み会で、記憶無くした日あっただろ? 気付いたらラブホに一人で寝てたって」
「……あの日、なのか」
「うん。先にオレが目覚めてさ。オレもあの日は酔っぱらって記憶にないんだけど、勇仁もそうじゃないかと思って……。もしそうなら、女の子と間違えたままの方がいいかと思ったから……先に部屋を出ていったんだ」
「くっそ……! そうだったのか」
ドンと音を立てて、勇仁が握った手を机に打ちつけた。悔しがっている勇仁の姿を見て、真琴は言わない方が良かったかもしれないと後悔を覚えた。
「ごめん……オレとだなんて、ショックだよな。言わない方が良かったとは思ったんだけど、そんなに勇仁が気にしてると思わなくて……」
「違う、そうじゃねぇ! 確かにショックだ。けど、それは……まことヤったっていうのに、何にも覚えてない自分にショック受けてんだ」
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