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落胆している自分とは違い、隣で寝ている勇仁は呑気なもので、夢の中でも女の子を口説いている様子だった。
二人のこの差が実に滑稽ではあるが、ふと思いなおして、真琴は囁くように声をかけてみた。
「ゆ、うと……?」
もしかすると、寝言を言った拍子に起きるのではないかと気になった。このタイミングで目覚められても困るのだが、寝ていると真琴が勝手に思い込むのも危険だと思ったからだ。
「んー……」
ドキドキしながら、勇仁の様子を暫く黙って見ていた。勇仁は一回唸っただけで、起きる気配は感じなかった。当然ながら、真琴の呼びかけにも答える事なく終わった。
勇仁が眠ったままだと確認が取れて、真琴はやっと張りつめていた気を緩めた。
少ししてから、すーすーと勇仁の寝息も聞こえてきて、安堵のため息を漏らした。
「何で、こうなったかな……」
ホッと一息ついた所で、真琴はボソリと呟いた。再び痛む身体に気遣いながら、今度はゆっくりとベッドから抜け出す。
布団に入っていた時から分かっていた事だが、全裸の自分を見てガッカリとした。
何もなかった事を期待するのは止めているが、こうして現実を目にすると、いちいち落胆してしまう。
服を着なければと思った真琴は、床に自分の物が散らばってるのを見つけて拾い上げる。
Tシャツから頭を出して着替えながら、真琴はぼんやりと浮かんできた疑問について考え始めた。
(昨夜の事は、オレの記憶には全くないけど、勇仁はどうだったんだろう……?)
勇仁も酔っていたからここに居るとは思うのだが、果たして真琴と同じようにからっぽ状態だったのだろうか。少しは意識があって、記憶に残っていたりするのだろうか。
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