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そんな事を頭に思い浮かべた瞬間、真琴は急に勇仁に触れられるのが嫌になった。
「や……やめろっ!」
一度は阻止された手を勢いよく引いた事で、勇仁の手から逃れる事が出来た。
「まこ? どうしたんだよ?」
いきなり取った真琴の行動に、驚いた表情をした勇仁がジッと見る。その問いかけには返せず、視線から逃れる様に真琴は身体ごと勇仁から目を逸らした。
「まこ……そんな恥ずかしがんなよ。真剣に口説いてる俺だって恥ずかしいんだから」
勇仁には照れ隠しだと思われた様だ。
確かに恥ずかしかったけど、拒んだのはそれだけではなかった。
今まで遊んでた女の子と、一緒なんて嫌だ。
真琴の中で、その感情が急に強く出たのだ。
そんな状態を知らない勇仁は、恥ずかしそうに言いながら、なんの疑いもなく真琴の隣へ移動してきた。
「なあ、聞いてんのか?」
身体を逸らしてる為、隣にいる勇仁の声が背後から聞こえてくる。呼びかける声は勿論真琴の耳に入ってきてはいるが、あえてそれを無視していた。
「まーこ!」
反応しない事に痺れを切らしたのか、今度は真琴の肩に手を置き、耳元で大きな声を出して話しかけてきた。
「もうっ、なんだよっ! ちゃんと聞こえてるし。それに……オレは照れてなんかいない。どうせ、今まで遊んできた女の子にも同じ事してたんだろ? 真剣に口説いてるとか、嘘つ……」
「まこっ……」
胸がムカムカして耐えきれなくなった真琴は、思いのままに口にする筈だった。それなのに、途中で強制的に喋るのを止められた。
別に口を塞がれた訳ではなく、勇仁に後ろから抱き込まれてしまい、気付けば喋るのを中断してしまっていたのだ。
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