【6】

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 これは勇仁が求めてる答えじゃないのは分かっていた。けど、下手に嘘を吐くより正直に告げた方がいいと判断して言った。 「そっか。それなら……まこ、こっち向いて」 「え、一体なに……んっ……」  言ってしまった事で、勇仁を落ち込ませてしまったかもしれない。けど、これで拘束から解放されるだろうと思っていた真琴は、勇仁の手に顎を捉えられ、後ろを振り向かされた。  いきなりの事に驚いた真琴は、一体何だと聞こうとして口を開いたが、そこを勇仁がすかさず自分の唇を重ねて塞いできた。  触れたのはほんの一瞬で、お互いのが重なって直ぐに離れていってしまった。 「まことキス。しちゃったな」  言葉を無くし、ポカンとしている真琴に向かって、勇仁は照れくさそうに笑って言った。  その顔があまりにも無邪気だったので、つい許してしまいそうになったが、直ぐに思いなおして頭を振った。 「ちょ、何すんだよ。いきなり……」  真琴は自分の唇に手をやって、動揺したままで文句を言った。 「顔を赤くしながら困ってるまこを見てたら、キスしたくなって、つい……」 「つい……で、許可なく突然キスなんかするか!」  唐突な勇仁の行動に混乱させられているというのに、仕掛けた本人は悪びれなくて腹が立った。勇仁は元から自分の意見を曲げない男だったが、何もこんな状況でそれを発揮しなくてもいいのに……と思う。 「じゃあ、許可取ったらもう一回してもいい?」 「ダメだ。勇仁ともう一回なんて……」  もう一度する気満々の勇仁に、虚をつかれたような気持ちになった真琴は直ぐに拒んだ。
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