【6】

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 正面から見つめてくる勇仁を見て、真琴の心臓が再び騒がしくなる。落ち着かなくて目を逸らしたい気持ちになる所を、なんとか思い留める事に成功した。  その代わりに勇仁と繋いでる手に力を込めれば、真琴より何倍も強い力でその手を引っ張られて、ベッドの上へと倒れ込んだ。 「ゆう……と?」  一瞬で視界が変わった事に驚いていると、真上から見下ろした勇仁が真琴の上に乗ってきた。 「まこ……もっと、していいか?」  顔を寄せた形で迫られてしまえば、拒絶の言葉は出てこなかった。 「黙ってるって事は、いいって事で受け取るけど……本当にいいのか? ここで拒んでくれないと、俺はこのまま進めるけど」 「えっと、その……正直、上手く出来るか分からないけど……」  喋ってるのに、胸がドキドキして煩い。  ピタリと身体をくっつけている勇仁にも、その音が聞かれてしまってるのではないかと心配する程だった。 「それ……いいって事で受け取ったからな。不安なのは、俺も一緒だ。でも……お互い酔っ払って記憶に残ってないけど、一回は出来たんだ。だからきっと……大丈夫だ」 「うん……」  勇仁も不安な気持ちを抱えてると聞いて、真琴は安心した。自分だけじゃないと分かった事が、こんなにも心強いと感じるなんて思わなかった。 「それと個人的には、ずっと好きだったまこを抱いた記憶がない自分に、いい加減ムカついてんだ。だから、あの日の事は無しにして、今から仕切り直ししてもいいか?」 「うん……」  勇仁が記憶のない自分に腹を立ててた事には、少しキョトンとして見てしまった。
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