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「身体、大丈夫か? 痛いところは?」
「だい……じょうぶ」
心配して聞かれた事には、素直に返した。
痛む程ではないが、本当は勇仁が入っている箇所がじんじんとしている。それはあえて口にはしなかったけど。
「まこ……」
真琴が言ったのを聞いた後、勇仁は少し強めに抱きしめてきた。素肌同士で触れあうと、ピッタリとくっついた所からお互いの温もりがじわじわと伝わってくる。
「勇仁……」
勇仁の温もりをもっと感じたくて、真琴も背中へ腕をまわして抱きついた。
「すげえ……嬉しい……」
「何が……?」
真琴が背中に手を置いたタイミングで、勇仁が嬉しそうに呟いたのが聞こえて、聞き返す。
「まこと、こういう事してるのが」
今度は真琴の顔を見ながら、勇仁が話してきた。その顔があまりにも嬉しそうで、真琴は自分がそうさせてるのだと認識すると、少し照れくさくなった。
「そっか……」
「でも、やっぱ悔しいよな……。初めてシた時に、俺達酔ってて覚えてないってのがさ」
勇仁にとって、余程悔しいらしい。
まだあの日の出来事に対する不満を、拗ねた口調で言い始めた。
子供みたいに表情がコロコロと変わる勇仁を見て、真琴は少し笑いそうになった。大学ではいつも余裕の表情を浮かべていた勇仁が、今はその面影もない。こんな勇仁の姿が見れるのも自分だけかもしれないと思うと嬉しくなった。
「勇仁」
そしてふと、気になった事が浮かんで名前を呼んでしまった。
「ん? なんだ?」
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