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「あの……勇仁はあの日、本当に記憶は残って無いのか?」
酔っていたにしても、お酒に強い勇仁が全く記憶にないというのは、信じられなかった。
途切れ途切れでも記憶は無かったのだろうか……?
そこが少し気になって、問いかけてしまった。
「んー、完全にというのは、嘘になるかもしれないな」
「え?」
「この状態で言う事じゃないけど、まこの事は何度も夢や妄想で抱いてる。だからあの日も、途切れ途切れの記憶はあったと思う。けど、俺は夢か現実か分からない状態でまことしたのが、余計に悔しいんだ」
悔しそうに顔を歪める勇仁を見て、真琴は自然と口を開いた。
「勇仁……オレだってあの日の記憶は全くないんだ。もし覚えてたとしても、今みたいにお互いの気持ちが向き合ってない時だったし、微妙かも。それに、さっき勇仁が言ってたじゃないか。仕切り直ししようって」
「まこ……」
「だから、もう……黙って」
ホテルを出た直後から勇仁にバレないようにと、気を張り詰めていた時が今では懐かしく思う。真琴としてはあの時の方が、記憶のない過去にこだわっていた。
けれど、勇仁に対して恋愛感情が芽生えて恋人になった今では、過去にこだわるのがバカバカしく思えてきたのだ。
それを勇仁にも同じように思って欲しくて喋り始めてみたが、段々と自分で言ってる事が恥ずかしくなってきた。これ以上続けるのは無理だと判断した真琴は、半開きになってる勇仁の唇に自分のを押しあてた。
真琴から積極的に行動を起こしたのがこれが初めてだったので、勇仁は驚いた様子で動きを止めていた。
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