【6】

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 抱きしめる力を緩めず、勇仁が呑気な調子で挨拶をしてきた。本当は勇仁が目を覚ます前に起きているが、それは言わないままにして挨拶を返す。 「はぁ……良かった」 「ちょっと、勇仁……くっつき過ぎだから」  安堵のため息を漏らした勇仁が、真琴の背中に頬をすり寄せてきた。素肌にピタリとくっつかれるのがくすぐったくて、思わず抗議の声をあげた。 「だって……前は、俺が起きたら居なかった」  少しだけ真琴を責めるような言い方をされて、返す言葉に困ってしまった。 「あー……」  前というのは、ホテルで過ごした日の事をさしているのは分かった。あの時は隠す事に必死だったので、今とは随分と状況が違っている。  それでも勇仁にとっては同じ状況だと思うと、どう言っていいのかと言葉に詰まってしまう。 「けど、過去は気にしない事にする。まこも昨日そう言ってくれたしな」 「……うん」  真琴が言葉を見つける前に勇仁から身体の向きを変えられて、向かい合う形になった。続けて言われた事を、真琴は大人しく聞いていた。  勇仁の方からそう言うとは思っていなかった為、嬉しくなって最後は口元が緩んだ状態で返事をしてしまった。 「それに、まことエッチが出来たからって、今の俺は浮かれてちゃダメなんだ」 「え……?」  嬉しさで膨らんだ気持ちが、もう沈みそうになった。  次に言ってきた勇仁の言葉の意味が、よく分からない。浮かれない様に我慢するというのはどういう事なんだろうか。  急によく分からない不安がちらつき、真琴は少し表情を曇らせた。 「まこに好きって思ってもらえる様に、もっと頑張らないとな」 「勇仁、何言って……」
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