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やる気をみせて言ったのを聞き、真琴はきょとんとしてしまった。
この状況で、一体何を言ってるんだろうか。
さっきとは別の意味で勇仁の思考が分からなくて、真琴の頭の中が疑問だらけになる。
キスをして身体まで繋いだというのに、今更何を……そう思うと、少し腹立たしくなった。
勇仁はこんなに無神経な奴だったのだろうか。
苛立ち始めながら真琴は、頭の片隅でそう思った。その感情のままをぶつけるのも気が引けて、少し冷静になろうと昨日の事を振り返ってみて、なんとなく理由が分かった。
「勇仁……」
無神経なのは、自分の方だったかもしれない。
さっき勇仁に向けて思った事が、急に申し訳なく思った。
昨日の真琴は余裕なんか一つもなかった。その所為で、大事な事を勇仁に言っていないままだと気付いたのだ。
言わなきゃいけない事があるのは分かったが、自ら切り出すのは照れくさい。
それでも先延ばしにしたらしただけ、言い出しにくくなるのも分かっている。
少し息を吸って覚悟を決めた真琴は、勇仁の腕を掴んだ。
「ん? まこ、どうした?」
「勇仁……オレ、ちゃんと言ってなかった」
「何をだ?」
「オ、オレも、ちゃんと……ゆ、勇仁の事が、好きだから……」
自分の気持ちを伝える事が、こんなにも緊張するだなんて思わなかった。
心臓が壊れるんじゃないかと思うぐらいに、ドキドキと音を立てて鳴っている。絶えずに鳴り続けるその音を耳にしながら、真琴は高揚する気持ちとともに言葉にした。
その後は、言えた事に満足してしまい、まともに勇仁の顔を見れる余裕がなかった。
「まじで……? まこ、本当か……?」
「うん……」
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