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やはり、真琴がさっき喋らない勇仁の代わりに答えた事に、機嫌を損ねたのだろうか。不安になりながら、とりあえず口を挟まず大人しく見守る事にしていた。
「はぁー? それが恩人の俺に言う事か? その自己中っぷりは、変わらずだな」
「そめやんには世話になったけど、正直今は会いたくなかった」
「おいおい、俺は二人の仲を取り持ったんだぞ? もっと感謝しろよ、ひどくねぇ!?」
「感謝はいくらでもする。けど、今日の所はさっさとどっかに消えてくれ」
二人のやりとりを黙って聞いていた真琴だったが、段々と勇仁の冷たい対応が心配になってきた。
「勇仁、そんなに冷たくしなくても……」
大学では仲良かっただけに、ここまで勇仁が染谷を冷たくあしらう理由が分からなくて、ついに口を挟んでしまった。
「おお、春木ぃ! ほら、春木だってそう言ってるぜ。あんなに二人に対して親身になった俺に対して、もっと優しくしろよ」
染谷の口から度々『二人の』と言われるのが引っかかる。もしかすると、真琴が知らないだけで、二人が仲直り出来る様にと染谷は勇仁と衝突したのかもしれない。
あくまで推測だったが、本当にそうだったらと思うと、真琴も他人事ではいられないと思ってしまった。
「ああ……そうだな、悪かった。でも今日は時間がないから、また今度」
さっきより少しだけ、勇仁の対応が緩やかになった。その事にホッとしたのも束の間で、真琴の腕を引っ張った勇仁が早々と立ち去ろうとした。
その力の強さに真琴も自然と足を動かす事になって、付いていこうとした。
「ちょーっと、待った!」
「わっ……」
背後から染谷の制止の声が聞こえたと思えば、同時に真琴の腕が掴まれて驚きの声が出た。
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