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「……なんだよ」
真琴の声を聞いて足を止めた勇仁が、舌打ちをしながら問いかける。
「二人して、これからどこに行くわけ?」
真琴が振り返った所で、肩に手を置いたまま染谷は笑って聞いてきた。
「映画……見る前に、ご飯食べに行くところ」
真琴の方を向いた染谷が、目で答える様に促してきた気がして、耐えられずに口を開いた。
「へぇ、いいなぁ! 俺も腹減ってたんだ。一緒に食べようぜ」
「はぁ!? 何言ってんだよ」
染谷がそう言った瞬間、黙っていた勇仁が急に怒ったように声を張り上げた。突然の事だったので、自分が怒られたわけでもないのに、真琴は身体をビクつかせてしまった。
「勇仁、そんなカリカリするなよ。春木も怯えてるじゃん」
「あ、いや……オレは……」
「まこ、大声出してごめん。別にまこに言ったわけじゃないから」
染谷に指摘され、訂正する間もなく勇仁が謝ってきた。
違うのになと思いながらも、それ以上言えなくて、口を閉ざした。
「折角仲直りしたばかりなんだ。仲良くいこうぜ」
勇仁と真琴の肩に手を置いた染谷が、呑気に言ってきた。染谷の事だから、勇仁が真琴に向けて怒った訳ではない事は分かっている筈だった。
「そめやん、お前が言うなよ。俺はまこに怒った訳じゃないっての」
染谷に対し、すかさず勇仁が不満気に言った。
「そんな事よりさ、早く食べないと、映画に間に合わないんじゃねぇの? 早く食べに行こうぜ」
「はぁ!? おい、そめやん! まだ一緒に食べるって言ってねぇよ」
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