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勇仁が言った文句をまともにとりあわなかった染谷は、二人の肩に置いていた手を背中へと移動させて、後ろから押し始めた。
いきなり加わった力につられて、真琴と勇仁人は二人して足を前に踏み出した。
背後から急がせる染谷に、勇仁はまだ文句を言っていた。染谷はそれに適当に相槌を打ちながらも、進める足を止めないでいる。
真琴も、足を止める事無く歩き続けた。あのまま立ち止まって二人の言いあいが続くけば、昼ご飯を食いっぱぐれてしまう恐れがあると思ったからだ。
それは勇仁も把握している様で、文句を言いながらも足を止めようとはしなかった。
完全に染谷のペースに巻き込まれ、最後は勇仁が折れた。仏頂面で染谷に対し、「何処か美味しい店に案内しろ」と偉そうに言うあたりが勇仁らしい。
それを見て、染谷が珍しいと口にしながら、明日の天気の心配をしていた。
確かに勇仁は人の意見をあまり聞こうとしないタイプだ。それでも頻度は多くないが、譲歩したり、後でフォローを入れたりするのを真琴は知っている。
勇仁との付き合いが真琴よりも長い染谷だって、そんな姿を何度か見てきているだろう。
きっと、場を和ませる為にふざけただけだ。
特に気にする事はなく、真琴は二人のやりとりを傍で聞いていた。言いあいになっているが、案外仲良しだなと思いながら。
染谷に案内されて、真琴達はハンバーガーの店に入った。そこそこボリュームがあって、挟んでる肉が美味しいんだと、染谷が絶賛したので真琴の期待が膨らむ。
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