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少し動揺はしたものの、気にしないようにして再び食べるのを再開した。
「まこ、そっちのも一口くれよ」
「ああ……はい、どうぞ」
食べ始めて少しして勇仁がそう言ってきたので、真琴は家で食べ物をシェアする時と同じように、勇仁の口元へハンバーガーを持っていった。真琴のハンバーガーにがぶりとかぶり付いた勇仁は、嬉しそうに味わっていた。
「美味い」と感想を漏らした後、今度は勇仁が真琴の口元へと、自分のを持ってきた。
「いやー、見せつけてくれるなぁ……」
真琴も同じように目の前にきた勇仁のハンバーガーにかぶり付こうとした瞬間、正面から染谷が言ったのが聞こえてピタリと止まった。
すっかり染谷が居る事を忘れていた真琴は、途端に顔が熱くなってきた。
家では普通にしている事だったが、今は外で染谷と一緒に食べている事を失念していた。いくら仲良しだとしても、友人としてはやはり距離が近すぎる。
その証拠が、染谷が言った事だ。多分、冷やかしの意味を込めてると思うが、仲良しの友人として通すのは少し苦しい所だ。
「あ……オレは、いいや」
咄嗟に口からそんな言葉が出た。
どう考えても不自然な感じになったのは否めないけれど、変に勘繰られるよりは良さそうだと判断して言った。
「遠慮するなって、まこは辛いの大丈夫だったろ? ほら、こっちも美味いぞ」
「いや、大丈夫……」
断った真琴に対して、勇仁は引かずに勧めてくる。目の前で二人のやりとりを見ている染谷が居るのに、この状況で食べれる訳がない。
「あ、春木。俺の事は気にせず、どうぞ」
困っていた所に、真琴が気にしているのを察した染谷がそう言ってきた。
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