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「落ち着いてからでいいからさ、さっき春木が俺に言おうとしてた続きを、聞かせてくれない?」
「あー……うん」
一呼吸して、再び染谷が問いかけてきた。
さっきの一連の事を振り返りながら、真琴はゆっくりと話し始める事にした。
「えっと……染谷が言う事に、さっきからずっと引っかかって、それが気になった」
「例えば? って……まぁ、分かってるけど、一応聞いてみようか。で?」
ニコニコと笑顔を張り付けて、染谷は真琴が続きを話すのを待っていた。
引っかかる言い方をしていたのは、やっぱりわざとだったのか。染谷の口ぶりから、真琴は妙に納得してしまった。
「あの、さっきのやつ……。オレ達がイチャついてるのは、今更ってやつは……」
言ってて恥ずかしくなってきた。
顔がじわじわと熱くなったのが分かったが、気付かないふりしてやり過ごす。
「いやー、今更でしょ! むしろこっちは、それで動揺してる事に驚きなんだけど」
「い、今更って……」
染谷から返ってきた言葉に、真琴はポカンとしてしまった。
今日の距離感が友人のそれではなかった事は認めるとして、それまでの大学で接していた自分達は違った筈だった。
少なくとも真琴の中ではその認識だったので、それを否定された様でショックを受けた。
「あれ、何か落ち込んでる? けど、俺は素直に言ってるだけだぞ」
「いや……染谷は悪くなくて。自分の認識とのズレに、ちょっとショックだったんだ」
咄嗟に片手で頭を抱えるようにすれば、少し心配そうに染谷が言った。本人の言うとおり、思った事を言われてるだけなので、染谷が悪いわけではなかった。
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