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分かっていても、まだ信じられなかった真琴は、携帯を耳から離して画面をまじまじと見つめた。
これで画面に勇仁以外の名前が表示されるなんてあり得ない事だ。でも、そうであって欲しいと、すがるような気持ちで確認した。
結果としては、残念ながら……というやつで、画面にはしっかりと勇仁の名前が表示されていたのだった。
「おーい。どうした、まこー?」
ジッと見つめている携帯から勇仁の声が再び聞こえて、真琴は慌てて耳へと戻す。
「な、何だよ……?」
面と向かって会っている訳ではないのに、バクバクと心臓の音が煩くなる。
勇仁とは大学で顔を合わせて話す事がほとんどだったので、電話で話す機会は少なかった。
それもあって、慣れない電話でのやりとりが変に緊張してしまう。
しかも、勇仁が真琴に何の用事で電話をかけてきたのか分かっていない為、尚更だ。
(もしかして今朝のホテルで、勇仁のやつ……本当は起きてたんじゃ……)
勇仁が用件を喋るまでは安心する事が出来ない為、真琴はつい自分にとって都合の悪い事を考えがちになる。
(勇仁が起きていただなんて考えられない……。でも、絶対寝ていたとも言い難いし……)
寝起きなのも手伝って、真琴の頭の中はパニック状態だった。
「まこー?」
「な、何……?」
勇仁が寝ていたかどうかを必死に考えていると、携帯から声が聞こえてきた。
慌てて返事をする傍らで、仮に勇仁が起きていたとしたら、電話で真琴に何を聞くのだろうか……?
浮かんだ疑問に答えが出なくて、モヤモヤするばかりだ。
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