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 染谷は髪の毛を明るめの茶色に染めていて、よく喋る男だった。話しやすいタイプではあるが、外見からのイメージがプラスされて、大概の人からは軽い男という印象をもたれているらしい。  本人としてはそのイメージを払拭したいようだが、勇仁と一緒にいる限りそれはいつまで経っても実現出来ないだろう。  二人ともイケメンなのは変わりないが、系統が違う為に比較されがちだ。勇仁が凛とした男らしい印象を与えるので、その隣に並ぶ染谷に対して同じようには思えない。それは、たとえ髪型等をイメチェンしたとしても、同じだろう。  そんな二人と肩を並べて一緒に講義を受ける真琴に至っては、比較される所かせいぜいおまけの様な存在に映っている筈だ。  今日の講義もまさに三人で受けるものだったので、真琴が居ない分二人に視線が集まりそうだなと思った。  三人で講義を受ける時は、勇仁を真ん中に挟み並んで座っていた。  二人と一緒に並んで座る事に、最初の内は苦痛だった。一緒に居るだけで注目が集まって、人の視線を感じる度に居心地の悪さが襲ってくる。  その視線の中にはきっと、釣り合わない真琴が一緒に居る事に対し、場違いだと思っている様な気がして、胃がキリキリと痛みそうだった。  極端に浮いている訳ではないのだが、空気感がちょっと違っているので、違和感は感じてしまうのだ。  自分でも分かっている分、最初の内はそれに慣れず、三人で受ける講義の日が憂鬱だった。
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