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「そんな話はどうでもよくて、なぁ……まこ。遅刻してもいいからさ、これから大学に来れないか?」
「え……?」
とりあえず、やっと電話が切れそうだと思っていた所に、勇仁から再び問いかけられて驚いてしまう。
今日受ける予定だった講義で、勇仁と被っているのは一つだけだ。それなのに真琴に大学へ来させようとする勇仁の意図が、全く読めないでいる。
電話で喋って晴れた筈の勇仁への疑いが、再びかかりそうになった。
「大した事じゃないんだ。あー、その、昨日の飲み会でまこには迷惑かけたから、お詫びに、メシでも奢ろうと思って」
「あぁ……」
暫く沈黙を守っていると、申し訳なさそうに勇仁が喋り始めた。それを聞いて、真琴は意図を理解した。
それにしても真琴が思っている以上に勇仁の方は、飲み会の最中に自分を放置してしまった事を気にしているらしい。
女の子に関してはだらしない勇仁でも、こういう所を気にするのはちょっと驚いた。
飲み会に初めて参加したならともかく、今まで何度か誘われて参加してきているのに、記憶が無くなるまで酔っ払った一度だけを気にするとは……。勇仁からすれば、初めてやらかした事だから、余計に気にしたのかもしれない。
しかも、直ぐに謝ってお詫びでご飯を奢ろうとする所にも驚いたが、それは素直に嬉しかった。
気持ちは有難いが、真琴は直ぐに断りの返事をする。
「有難う。でも……ごめん。実はオレ、ちょっと風邪気味っぽくてさ。身体もダルいし、風邪だったらうつしたくないから、今日はやめておくよ」
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