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   あの後は……と、真琴は曖昧な記憶を辿りながら、勇仁に連れて行かれた飲み会を思い出す。  合コンと言うよりもサークル飲みに近い感じの飲み会で、体育会系のノリを感じた。  大人数の場は苦手な真琴としては、勇仁を盾にしてやり過ごそうと思った。そんな真琴の思惑通りとなったのはほんの数分だけで、人気者の勇仁は直ぐに年上のお姉さんからの呼び出されて席を離れてしまった。  残されてしまった真琴は、近くに座っていた人達と話して何とかやり過ごしていた。  お酒は飲めるが強い方ではない為、いつもと同じくカシスオレンジを飲んでいた。そこへ、同じテーブルの人から「これも甘めだからいけると思う」と勧められて、飲んだワインがいけなかった。  甘口のスパークリングワインは、真琴でも抵抗なく飲めてしまい、その後も何度か注がれて飲み干した。飲み始めた時は意識もしっかりとあったはずなのに、途中で急に酔いが回ってしまったらしく、見事に記憶を失ってしまい……気付けば今に至るという状況だ。  そういえば、勇仁はどうしたのだろうかと、今更になって飲み会に誘ってきた友人の事を思った。  勇仁とは、大学一年の後期に履修した講義で知り合った。  去年受けたその講義は、人数制限を設けており、受講希望者が人数を超えれば抽選で選ばれる事になっていた。  真琴もダメ元で申し込みをしたのだが、抽選結果が貼り出された掲示板を確認すると、そこに自分の名前があって驚いた。  人数を絞ったその講義では、毎回グループワークがあり、近くに座ってる者同士でグループを組まされた。
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