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 よく見ると近くのスーパーの買い物袋で、中身を確認すれば風邪気味と嘘をついた自分への差し入れ品だった。  これを置いて行ったのは、間違いなく勇仁だろう。  確信に近い真琴の推測は、案の定外れる事は無かった。それが分かったのは、放置しっ放しの携帯を見た時だった。画面を見ると勇仁から着信が二件入っていたのだ。  結構深い眠りに入っていた様で、着信があったのに気付けなかった。掛かってきた時間を見れば、真琴が電話を切った二時間後だった。恐らく、講義を受けてから再び掛けてきたのだろう。  着信の他には、、メッセージも一件入っていた。こっちは、真琴が電話に出なくて諦めて帰る時に送ったものだろうと思われる。  内容は『電話したけど出なかったから、差し入れを置いておく』というものだった。  正直、勇仁がそこまで真琴を心配していた事には、驚きを隠せない。その意外さが逆に、真琴を大学へ行こうとする決心をつけた。  そう思えたのは、風邪だと思いこんでいる勇仁に、これ以上心配させるのは気が引けたから。それに今日も休めば、確実に勇仁がやってきて、家に入れるまでは帰らなさそうだ。  後々に面倒事がやってく事を考えれば、大学で勇仁と会っておいた方がマシだと考えて、真琴は大学へ行く選択をした。  家を出てやってきた電車に乗り込む。乗ってしまえばあっという間に、大学の最寄り駅に辿り着いてしまった。  普段の通学に比べて、今日はやけに二十分間の道のりが早く感じられる。電車を降りて大学へと足を進めていくと、真琴の気分は徐々に重くなっていく。  あまり考え過ぎてもしょうがないと思った真琴は、あえてポジティブに思考を働かせようとした。  大学自体、そこそこ広い所ではある。講義で顔をあわせる事はあれど、それまでに勇仁と出会う確率は極めて低いだろう。
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