【2】

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「大丈夫か……?」 「うん……」  布団を鼻の所まで引き上げれば、勇仁の手が伸びてきて、真琴の額に触れた。 「熱……は、なさそうだな」 「うん、オレは大丈夫だから……」  風邪で体調を崩した訳ではないので、熱を測られても当然ある筈がない。  本当の事を言うつもりがない真琴は、風邪だと思いこんでる勇仁が安心して大人しくなるならば、好きにさせようと思った。  勇仁と二人きりになってしまい、真琴は変わらず気まずさを感じていた。それでもまだ大学で顔を合わせた時よりは慣れてきた様で、少しずつ普通にやりとりが出来る様になってきた。  それに、今は布団という強い味方がいる。いざという時にこれは、真琴の顔を布団で丸々隠す事が出来る有難いアイテムだ。 「そう……だな。さっきより顔の赤みも引いてるしな」 「自分では分からないけど、そうかな?」  少しホッとした様子の勇仁が、真琴の額に置いていた手を今度は頬へ移動させた。その際に鼻まで被っていた布団を取られてしまったが、抵抗する事は出来なかった。  両手で包み込むように真琴の頬へと触れてきた勇仁の手が、思いのほか優しかったので少し驚いてしまう。その仕草は、いつも強引で大雑把な勇仁しか見た事がない真琴からは、想像が出来なかった。  自分は初めて見たが、女の子相手だと普通にやってそうだ。普段と違うこのギャップにやられて、女の子が勇仁に惹かれるんだなと思って納得した。  日頃から派手にとっかえひっかえしている勇仁なのに、寄ってくる女の子が尽きないのは、この辺に秘訣とやらがありそうだ。 「どうしたよ? 俺の顔に何かついてるか?」  新たな発見に真琴が感心していると、いつの間にか勇仁の顔をジッと見てしまっていた様だ。不思議そうな表情をした勇仁に聞かれて、真琴はパッと目を逸らした。
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