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「べ、別にっ……」 「ふーん。なぁんだ、俺の顔が格好良くて、見惚れてたのかと思った」 「な……何、馬鹿な事言ってんだよ。勇仁の相手して疲れたから、そろそろ寝させてもらう」  揶揄い混じりで言われて、勇仁が冗談半分で言ってるのは分かっていた。なのに、真琴の鼓動が煩くなってきた。  自分で確認出来ないが、もしかしたら顔も赤くなってるかもしれない……。そう思った真琴は、早々と布団を鼻まで引き上げて勇仁に背中を向ける形で横になった。 「だな。病人はゆっくり寝てろよ。俺は今から何か買ってくる」  急に遮る様な態度を取ってしまった真琴に、勇仁は気にしない様子で声をかけてきた。これから買い出しに行くと言ったのを聞いて、少しの間は一人でいられる事にホッとした。 「うん、分かった。おやすみ」  まだ真琴の側に居ると思われる勇仁に向けて、それだけ言ってから目を閉じた。  勇仁からも控え目な「おやすみ」の返事があった。  足音がして暫くすれば、玄関のドアの開く音がした。開いたドアは直ぐに締まり、ガチャガチャと鍵が掛かる音がする。その後は、徐々に勇仁の足音が遠ざかっていった。 「はー」  勇仁が出かけたと確認出来てから、真琴は長い溜息を漏らした。二人でいるとどうしても構えてしまうから、気が抜けなくて無駄に疲れてしまった。  勇仁と一緒に居る事に、こんなに気を張り詰めた事なんて今まで無かった。多少ピリピリする様な事は何度かあったが、それも一瞬だけの話しだった。先ほどの様にずっとなのは、真琴にとって初めての事だ。
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