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何で笑ってるのか分からず、ポカンとしてしまったが、なんとなく聞けなくてそのままにした。
「腹減っただろ? うどん作ったけど、食べれるか?」
「うん……」
その声で起き上がり、真琴は勇仁の家で寝る事になった経緯を思いだした。
(そうか……体調悪いと勘違いした勇仁に無理やり連れて来られたんだった。オレ、いつの間にか寝てたのか)
病人だと思いこんでいるとはいえ、勇仁が人の為に料理を作るだなんて、意外だった。
「勇仁も、料理するんだな……」
驚きから思わず口にも出してしまい、言った後にしまったと思った。だが……もう後の祭りだ。
「そりゃ……俺だって一人暮らししてんだからな。簡単なものしか作れないけど、たまには料理ぐらいするぜ?」
少しムッとするかもと思っていたが、それは真琴の杞憂に終わった。勇仁は不機嫌になること無く、和やかに返してきた。
「そっか。オレがここに来た時は、大体出前を頼むから、意外だったかも」
「随分な言われ様だな。けど……間違っちゃいないけどな」
「だな……」
少し間があってから、お互いに笑った。
そこには……少しずつだが、いつも通りの真琴と勇仁の会話が成り立ってきていた。
ぎくしゃくしてから日は経っていないのに、感覚的にはこのやりとりが懐かしいと思えた。
「……まこ」
出来ればこのまま何事もなく過ごして、今日一日を終えたい。
そう願った直後に、勇仁の手が真琴の肩付近へと延びてきた。
「え……?」
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