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さっきまでの和やかな空気からは一転し、一気に緊張が走る。そっと人差指で首元に触れられて、真琴はビクッと身体を揺らしてしまった。
「ゆ、勇仁……?」
恐る恐る勇仁の方を見れば、真剣な表情をしていたので一度は声をかけるのを躊躇った。それでも気を取り直して、名前を呼んでみた。
熱の心配をしているとしても、触れた箇所が額では無く首元だったのが引っかかる。もしかして、汗が垂れていて拭ってくれたのだろうか。
「あ……わり。リンパとか腫れてるかなと思ってな」
「そ、そう……」
暫くしてパッと手を離した勇仁が、触れてきた理由を話した。なんとなく不自然に感じたが、とりあえず返事した。
それ以上は何て言うべきなのかと迷い、結局返事をした後は口籠ってしまった。なんとも言えない微妙な空気が二人の間に流れて、何だかやるせなかった。
「と、とりあえず……飯食おっか」
「……そうだな」
その空気を壊したのは、ゴホンと咳払した勇仁の方だった。それに頷いた真琴は、今度こそベッドから抜け出すと、勇仁と向かいあった状態で座った。
目の前には、ほわほわと湯気が出てる出来たてのうどんが用意されていた。
「いただきます」と挨拶した後、手にした箸でうどんをつまみ、熱を冷ますためにふーふーと息を吹きかけた。
冷ましたうどんを口に含んだ瞬間、うどんを啜る音が聞こえてこない事に気付き、真琴は視線だけを勇仁の方に向けた。
見た瞬間に驚いた真琴は咄嗟に口を開けてしまった為、咥えていたうどんを再び器の中へと戻してしまった。
そうなってしまったのは、勇仁が箸も手にしていない状態で、ジッと真琴の方を見ていたからだ。
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