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まともに目を合わせられないと思って、俯いていたから気付かなかった。真琴が食べる所を勇仁がジッと見ていただなんて……。
その光景を想像しただけで、凄く恥ずかしくなった。
「た、食べないのか……?」
自分から視線を逸らして欲しくて、今度は真琴から話しかける。
「え? あっ……味が、まこの口に合うかなと思ったら、つい心配で……」
そこでやっと視線を逸らした勇仁が、頭を掻きながら答えた。初めて自分の手料理を出したから、真琴の口に合うか気になって仕方なかったようだ。
勇仁もうどんを啜り始めた所で、真琴も再び口にした。
勇仁が作った素うどんは、具材は何も乗っていなかったが、出汁の味がきいていた。
「美味しいよ」
食べる合間にそう告げると、「とーぜん!」と自信満々で言ってきた。先ほどまでと態度がガラッと変わり、真琴は呆気にとられてしまった。
そのやりとりの後は、お互い無言でうどんを啜った。何も喋らない事で気まずい空気は流れていたものの、食べてる事が理由に出来たので、無理に喋ろうとは思わなかった。
それにテレビがついていたので、無音ではなかった所がせめてもの救いだ。
ここに長居するつもりがない真琴は、早めに食べ終えて体調が良くなったから帰ると言おうと決意した。
食べ終えた後に気まずくなるのは分かりきっているので、うどんを食べるスピードを気持ち早める。
「なぁ……まこって、好きな奴とか……居たりするのか?」
スピードアップを試みた所に、いきなり勇仁が変な事を言い始めた。それが予想外すぎた為、驚いた真琴は思わず噎せてしまった。
「わー、まこ、大丈夫か?」
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