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ゴホゴホと咳込んだ真琴を見て、勇仁はティッシュボックスを手にすると、数枚引き抜いて渡してきた。
「あ……りがと」
落ち着いてきてからお礼を言うと、勇仁はしかめっ面をしていた。何故そんな顔をしているのか分からない真琴は、困ってしまって再び何も言えなくなった。
「聞いただけでそんな動揺するなんて、まこに好きな子が居るって事だよな? 俺、一度も相談とか受けた事ないんだけど」
「はっ……?」
真琴が黙り込んだタイミングで口を尖らせた勇仁が、拗ねた口調で言ってきた。言われた真琴の方も理解出来ず、固まってしまう。
噎せてしまったのは、勇仁が言ったように図星だったからではない。予想外過ぎて驚いたからだったのだが、勇仁にそう受け取られている事に呆れてしまう。
普段の真琴を見て、何処に恋愛の要素があったというのだろうか。いきなりの質問にも驚いたが、勇仁の思考にも更に驚かされた。
「何だよ、俺達は友達じゃなかったのか?」
しかも、勝手に勘違いした上に拗ねている。
一言でいえば『面倒くさい』である。
勇仁が不満をぶつけてきたので、早めに否定しないといけないという思考が働く。
「いや、ちょっと待て。何で急にそんな話になってるんだ? 別に、オレには好きな子なんていないけど……」
勇仁は普段から、突然違う話題を話し始める事はあった。しかし、こんなに突拍子もない事を言ったのは、今が初めてだった。
「なーんだ、やっぱ違ったのか」
「え……?」
次は何を言ってくるのかと構えていたのに、勇仁はあっさりと引いた。しかも、真琴が否定をするのが分かっていた口ぶりだ。
「いやー、何か昨日からまこの様子がおかしかったからさ、好きな子でも出来たのかと思ってな。ちょっと鎌かけただけ」
「そ、そうなのか……」
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