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深く問い詰められずに済んで良かった筈なのに、どういう訳か釈然としなかった。しかも、好きな子がいるかもと疑われた事も、いまいち理解が出来ない。
確かに、昨日から勇仁に対する態度がおかしい事には自覚があるから、疑われても仕方がない。だからといって、その理由が好きな子がいるだなんて、少し無理があると思った。
鎌をかけるにしても、もっと別の理由で聞けばいいのに。
「なんだ、ちょっと元気ないみたいだけど……やっぱ図星だったか?」
「いや、それはないから」
真琴の心境を知る由もない勇仁が、まだ引っ張ってこようとしたので、それには呆れた口調で返した。人の恋バナに興味のない勇仁がその話題で引っ張るあたり、真琴の態度が随分違っているという事だろう。
「体調悪かったし……もし風邪引いてたら、うつしたくなかったんだ」
「……ふぅん」
この話は終わりとしたかった真琴は、それだけ言うと再びうどんを啜った。
食べ終えてから、真琴は勇仁に自宅に帰る事を伝えた。当然ながら勇仁は納得せずに引き止めてきたが、いきなり来て着替えがない事を言い訳にして阻止した。
さらにベッドで寝させてもらったから、体調が良くなったと付け加えて、真琴は勇仁の家に泊まる事無く自宅へと帰る事が出来た。
***
「お疲れ様です」
バイトの休憩時間となりスタッフルームのドアを開けた真琴は、先に休憩していた砂川愛莉の姿を見つけて、挨拶をした。
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