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「いいですね」
「あ、そろそろ行かないと」
砂川が時間を見てそう言った後、休憩に入った真琴と入れ換わりで、スタッフルームから出ていった。
「はぁ……」
一人になった瞬間、真琴はため息をついて机に突っ伏する様に脱力した。
自分でも分かるぐらいに、疲れが相当溜まっている。
その理由は、あの日――勇仁の家に連れて行かれた日から、前にも増して大学で勇仁が真琴に干渉する頻度が増えたからだ。
まるで、監視をされてる様な感じで、気が休まらないのだった。本当に監視だとしたら、真琴に好きな子がいるという疑いが、勇仁の中で完全に晴れていないからだろう。
本人には聞いていないが、会話の流れで女の子を気にする発言が勇仁の口から出るたびに、きっとそうなんだろうと思った。
大学へ行くと必ずと言っていいほど勇仁と顔を合わせるので、前みたく変に気まずく思う気持ちからは解放されてきた。
しかし、それ以上に厄介になった今は、大学から離れたバイト先と、一人で居られる自宅だけが、唯一心が安らぐ場所だった。
勇仁も真琴の行動を見るうちに、好きな人どころか、色恋ごとに無縁なのに気付くとは思う。勇仁が飽きるまでの辛抱だが、一体それがいつになるのか分からない。
いつまでこの状態なのだろうかと、ぼんやり考えながら真琴は残りの休憩時間を過ごした。
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