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想定外の出来事というのは、いきなりやってきた。
「はっ……?」
いつも通り大学で顔を合わせた勇仁からの第一声を聞き、真琴は思わず声を出して驚いた。
「え? だから、二週間ほどまこの家に泊めてくれって言ったんだけど」
「勇仁、唐突すぎて春木が固まってんじゃん。いつも事だけど、理由ぐらい話してやれよ」
言葉をなくした真琴の様子を見て、タイミング良く染谷が割って入ってくれた。
染谷は基本、人が困っている時には、面白がってはやし立てるタイプではある。しかし、状況を見てたまに、柔軟に対応をする事もあった。今もそうだ。
染谷が言ってくれたお陰で、真琴は少し落ち着く事が出来た。
「あー、理由か。実は今住んでる所の水道管がダメになってさ、水漏れしたから大家さんに相談したんだ。そしたら修理して貰えるんだけど、部品の取り寄せの関係で二週間はかかるらしくてさー」
まいった、まいった等と口にはしているが、勇仁の様子を見ればそこまで困ってなさそうだった。
「そんな困ってなさそうじゃん」
真琴が心の中で思ったのと同じ事を、染谷が口に出して言った。
「そめやんの目は節穴か? 俺はすっっごく、困ってんだよ」
染谷と勇仁のやりとりを聞きながら、喧嘩にならない内にと思って、真琴は口を挟んだ。
「今、勇仁の家はどうなってるんだ? まさか、水浸しとかじゃないよな?」
詳しく状況を理解したくて、突っ込んで聞いてみた。緊急事態でなければ、勇仁からの申し出は遠慮したい所だ。
大学に居る間だけなら、勇仁とのやりとりにも慣れてきた頃だった。それが、真琴が安らげる場所の自宅までもとなると、流石に耐えられそうにないと思った。
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