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 最近だと、飲み会に誘われる事が増えて、真琴が乗り気じゃないと断っても、勇仁が意見を押し通してくる場面がほとんどだった。  真琴は勇仁とは違って、目を引くタイプではないし、女の子受けするとも思えない。  褒め言葉と捉えていいのか分からないが、真琴に対して人からよく貰う言葉は決まって『いい人そう』だ。その言葉を貰う人は、異性から恋愛対象じゃないと思われてるのと同じと何処かで聞いたことがある。  そういえば、高校の時に付き合った彼女にもそう言われた事があり、キスどまりで交際が終わったのを同時に思い出して、少し落ち込んでしまった。  勇仁と並ぶと真琴の印象は更に霞んでしまう為、本当なら誘ってくる飲み会は全部断りたい。それでも頻繁に飲み会の誘いが来るので、最初は真琴を引き立て役にしようとして呼ばれてるのかと疑っていた。しかし、勇仁ほどのイケメンはそんな事をしなくても自然とモテる。  それに飲み会の最中は、極力真琴の傍に居てくれる事が多いので、疑うだけ無駄だと思った。勇仁が女の子の所に行かず傍に居てくれるのは、真琴が初対面の人と喋るのが苦手だと分かっててフォローする為だ。  その気持ちは有難いのだが、線が細くパッとしない真琴は、勇仁が隣に居る事で大きな差を感じてしまい、微妙に惨めな気持ちになってしまうのだった。   未だに勇仁が飲み会に自分を連れて行こうとする理由は分からない。もしかすると、他の友人は飲み会のお誘いに喜ぶから、真琴にも喜んでもらう為なのかもしれない。  そう考えると、今後も飲み会の誘いから逃れる事は出来なさそうだ。全部を断れないとしても、せめて参加する回数は減らしたい。  今日こそは……と、心の中で思うのだが、それが叶った事は一度もなかった。  それに、勇仁が飲み会に参加するメリットは、分かりきっていた。飲み会後に、女の子をそのままお持ち帰り出来るチャンスが多いからだ。
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