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「そうだよ。折角、染谷が協力しようとしてくれてるんだし……」
「だって、そめやん家は俺の家と逆方向だし、使ってる路線も違うしなぁ……」
勇仁が言った理由を聞いて、真琴は呆れてしまった。
この男は、どれだけ我が侭なんだろうと。前から思ってはいたが……今ほどそう思わずにはいられない。
確かに、真琴と勇仁は同じ路線だし家も近い方だ。対して染谷の家は逆方向ではあるが、大学まで掛かる時間としてはそんなに変わらない筈だ。
「おいおい……世話になる身分で、よくそんな事が言えるな?」
「だから、俺は最初からそめやんじゃなくて、まこに頼んでるんだって!」
染谷の家という選択肢も考えていたらしい勇仁は、最初から真琴に絞って頼みにきたようだ。ここまで言われてしまえば、真琴も断りづらい。
「と言ってもな、いきなり泊まりに行っても、春木だって困るだろ」
「それはそうだけど……。まこはそめやんと違って彼女いないし、頼まれてくれるかなって思ってさ。それとも、密かに彼女候補とかはいたりするのか?」
勇仁がいつもの様に探る様な目を向けてきたので、真琴はそこでやっと察した。
単純に家が近いからという理由だけで勇仁は真琴の家に泊まりたいと言ってきた訳じゃない。
恐らく、真琴に好きな女の子がいるかどうか、探る目的も含まれているようだ。
どんなに疑われても居ない事は確かだが、ここまで勇仁が気にする方が珍しいとも思えた。
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