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真琴が言いたいのは期間の話じゃなかったのだが、勇仁はその話題を出した。そして先日家の前まで来た話をサラッと言った後、爽やかな笑顔をみせた。
悪気があった訳じゃなく事実を言っただけだとは思うが、あの日の事を思い出して真琴の胸がズキリと痛んだ。
「……あの時は、ごめん」
済んだ事ではあるが、嘘をついた罪悪感から真琴は謝らずにいられなかった。
「いや、まこに謝って欲しいから言った訳じゃないから、気にするな。それよりさ、まこ……あの時って、家に一人だった?」
「え……?」
真琴が謝った事で勇仁が慌てて宥めに入った。やはり悪気がなかったという事は分かったが、続いて聞かれた言葉には頭の中に疑問符が浮かぶ。
自然と俯いていた真琴は、そっと顔を上げた。直ぐに目があって、真琴の目に映った勇仁は眉間にシワを寄せて、難しそうな表情を浮かべていた。
「いや……体調が悪かったのは分かってるんだけど。あの日のまこ、何か焦ってる感じで早く電話を切りたそうだったから、誰かと一緒に居たりしたのかと思ってさ」
「あれは……」
言われて、真琴はやっと理解した。
つまり、あの日の電話でのやりとりが、真琴に彼女に近い相手がいるのではと勇仁に疑われるきっかけになったという訳だ。
少し前からやけに探りを入れてきたりして、急にどうしたのかと不思議に思っていたが、そうなった原因が分かってスッキリとした。
「やっぱ女の子と居たってやつか?」
「何でそうなるんだよ。勇仁と一緒にしないでくれ。それに関しては、ずっと否定してるけど……残念ながらオレに女っ気なんて無いから」
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