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「まこって、意外と鈍いからな。モテないって安心しきって、肉食系のお姉さんに狙われない様に気をつけろよ」
「何を言いだすんだよ。そんな羨ましい状況、一度も遭遇した事ないね」
まさか起こりもしない事を言い出すとは、勇仁は意外にも妄想力にも長けているようだ。
やりとりするうちに少し馬鹿らしくなってきた真琴は、今度は少しだけ冗談交じりに言ってみせた。
「なんだよ、まこ……襲われたいのか?」
言った直後に機嫌を損ねた勇仁の様子を見て、しまったと思った。
襲われる事態なんて起らないにしても、心配してくれる勇仁の気持ちを汲み取って、冗談で返さない方が良かっただろうか。
「ゆ……うと……?」
しかし、そう思った時点で既に遅いのだ。
少し険しい表情になった勇仁の顔を見続けられなかった真琴は、顔をそっと逸らした。
やっぱり、冗談で流したのが気に障ったみたいだ。
他に勇仁が機嫌を損ねた原因について考えてみたが、タイミング的にはやはりそれしか浮かばなかった。
「まこ……本当に分かってんのかよ。ぼけっとしてると、こういう事になるんだぞ」
真琴が考え事をしている間に、正面に居た勇仁がいつの間にか隣へと移動していて、距離を縮めてきた。
そして、ベッドの上に座っていた真琴の肩を掴むと、そのまま後ろへ押し倒した。
「わっ……ゆ、勇仁……?」
訳が分からないまま視界が反転し、気付けば真琴を上から見下ろす勇仁の顔があった。
「まこ……」
複雑な表情を浮かべている勇仁が、何を思ってこんな行動を取ってきたのか疑問に感じる。冷静に今の状況を整理しなければと思えば思う程、頭がこんがらがってしまう。
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