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それでも、勇仁が体重をかけてくるので、真琴に焦りが増す。
「まこ、マジで分かってないだろ」
「ゆ、勇仁……もう……」
抵抗していても勇仁の方が力は強い為、二人の距離が徐々に縮まっていく。もうなす術がないと判断した真琴は、無意識にギュッと目を瞑った。
ちょうどその時、無音だった部屋に軽快な音楽が流れだした。
「あ、俺の携帯だ」
どうやら勇仁の携帯から流れた様だ。
勇仁がボソッと呟いた後、真琴の上からあっさりと退いた。急に重みがなくなって、真琴は驚きのあまり目をパチッと開けてしまった。
「はい、もしもし」
視界に飛び込んできたのは天井の白い壁だけで、そこからも勇仁が真琴の上から退いた事を知った。
「あー、そめやん。ちょっと待った」
話し声につられて上体を起こすと、立ったまま喋っている勇仁の姿が見えた。
「まこ、ちょっと外で喋ってくるわ」
勇仁と目が合った瞬間、携帯を耳から離して真琴にそれだけを言ってきた。それに頷けば、勇仁は染谷との電話を続けながら部屋から出て行ってしまった。
「なん、だ……今の」
一人っきりになった真琴は、思わず呟いた。
混乱して考える思考が低下しているとはいえ、さっきの出来事を振り返っても何故こうなったのか……訳が分からない。
真琴をベッドに押し倒し、その上に乗っかってきた勇仁の姿まで思い出すと、急に心拍数が跳ね上がった様な気がした。
「酔って、なかったよな……?」
真琴は勿論だが、勇仁もお酒は飲んでいなかった筈だ。二人とも完全素面の状態だった。
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