【1】

6/28
前へ
/165ページ
次へ
 勇仁に彼女が居ない今、その辺は自由に楽しんでいるようだった。手が早いのは友人達も知っている事だし、女の子の間でも噂が回ってる程だ。  実際、どこまで出回ってるか分からないが、少なくとも大学内では有名な話だった。それを知った上で、飲み会中に勇仁にアプローチしてくる女の子がいるのだから、逞しいものである。実際、真琴も何度かその現場は見た事がある。  勇仁だって年頃の男だし、やりたい盛りなのだ。誘われて満更でもないから、タイプの子だったら拒む事はしない。  アプローチを受けてる回数ですら真琴が把握しきれないぐらい、出会いが豊富なのにも関わらず、自分が知り合ってから勇仁に彼女が出来た事はなかった。  勇仁と出会ってもうすぐ一年になるのだが、話題にすら上がる事がない。  本人に作る気がないなら仕方ないが、知り合う女の子の中には、遊びだと割り切れない子が居るのも知っている。  直ぐに彼女を作る気になるのは難しいとしても、友人として勇仁にはそろそろ落ち着いてもらいたいと密かに思っていた。  そうは思えど恋愛がらみの相談すらされた事がない真琴は、口を挟まずそっと見守るしか出来なかった。 「はぁ……」  最近の飲み会では、勇仁にいい感じの女の子が現れればいいなと思って参加する事が増えた。まるで陰ながら見守る保護者みたいだ。  それなのに、昨日の飲み会では見守る所か、記憶をなくして周りにも迷惑をかけてしまった。  目覚めた時に頭がやけに重く感じたのは、二日酔いの所為だったと理解した真琴は、落胆のあまりため息を吐いた。  それにしても、酔っ払って記憶を無くした真琴が、無事に自宅まで辿りついたとは思えず、今度は自分が何処にいるのだろうかと疑問に思った。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

745人が本棚に入れています
本棚に追加