【3】

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 勇仁からすれば、肉食のお姉さんに襲われない様に、レクチャーをしたつもりなのだろう。それでも実践しようとした意味は分からないが。 「はぁ……何なんだよ」  再び上半身をベッドに預ける形で寝ころんだ真琴は、ため息と共に不満を漏らす。  勇仁が急に取ってきた行動が予想外過ぎて、ひたすら驚いた。  少し時間がたった今だからこそ、考える余裕も出てきたが……それでも心臓はまだバクバクしている。  そんな状態でもふと、ラブホで過ごしたあの日も、あんな感じだったのだろうかと思った。  情景をぼんやりと想像した瞬間、真琴の心拍数はまたしても跳ね上がった気がした。  どさくさに紛れてそんな事を考えてしまった真琴は、急に居た堪れない気持ちになった。  相変わらず、あの時の出来事は真琴の記憶にないままだが、実際に勇仁に乗りかかられた事で生々しさが増した。 (あの日のオレは、勇仁とあれ以上の事を……)  考え出すとそればかりが真琴の頭にチラつく。おまけに、じわじわと顔に熱が集まってきたので、真琴は咄嗟に両腕で顔を覆った。 「まだ初日なのに……」  はぁ……と盛大なため息を吐いた真琴は、勇仁と過ごすこれからの二週間を考えて、気が遠くなった。  ただでさえ、あんな事があって気まずくなったというのに、勇仁からまた何か仕掛けてこられたら……それを考えると、苦労が絶えない二週間になると思った。 「ふー、やっぱ外は暑いな……」  ガチャとドアの開く音がして、勇仁が部屋に戻ってきた。その声を聞いて、真琴はガバッと起き上がった。
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