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「え……?」
話題を広げる気にもなれなかった為、直ぐに気まずい沈黙がやってくるのは覚悟していた。しかし、それがやってくる前に勇仁が間を開ける事なく提案してきた。
急な話の転換に、真琴は少し面食らってしまい、直ぐに理解が出来なかった。
「ほら……料理担当とか、掃除担当とか、色々とあるだろ?」
「あ、ああ……」
真琴の返事が微妙だったからか、勇仁が例えを挙げながらもう一度言ってきた。
そのお陰で理解はしたが、何か長期でルームシェアを始めるみたいな会話だなと、不思議に思った。
「じゃー、しょうがねぇな。料理担当は俺がやるか」
「え、待って。何言ってんの? 勇仁、まともに料理作った事無いだろ?」
「作ったじゃん、この前」
「あれは、ただのうどんだっただろ?」
わざとそうしているのか、勇仁が冗談っぽい口調で担当の話を進めてきたので、真琴もつられてツッコミを入れる。
さっきの空気感とは違って、いつも大学でやりとりしている感じで会話出来ている事に、真琴は少しだけホッとした。
結局、素うどんを作っただけで自信満々に料理担当をすると言い張る勇仁を説得し、担当分けはしない事になった。
一緒に住む期間はそんなに長くないし、基本的には気付いた方がやるという事で落ち着いたのだった。
初日の今日は、麺を茹でて市販のソースをからめるだけのパスタと、ドレッシングを掛けただけのサラダを真琴が作った。
真琴も毎日の様に料理はしないが、それでも時間のある時に簡単に作るぐらいはしていた。今日の夕飯は、大して凝ったものは作っていないのだが、勇仁にとっては尊敬に値するものだったらしい。
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