【3】

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 布団を敷き終えたタイミングで、勇仁が風呂から上がってきた。 「うん、勇仁はここで寝てくれ」 「なんか、わざわざ布団出してもらって悪いな」  勇仁が申し訳なさそうに言って、真琴が敷いた布団の上に座った。 「別に、出すだけだし」 「でも、前にここに泊まった時は、布団敷かなくていけただろ?」 「まぁ……でも、あの時は……」  言われて、過去に一度だけ勇仁がこの部屋に泊まった事を思い出す。  その時は、勇仁がレポートの提出期限に追われて、真琴の家にあった参考資料を見るのが目的だった。  当初はその日の内に帰る予定だったのに、結局レポートが終わらず、そのまま真琴の家に泊まる事になった。  確かに勇仁が言った通り、その時は布団を出さなかった。何故なら、真琴が風呂から上がった時には、勇仁は机に突っ伏して寝落ちしていたからだ。 「ま、俺が寝落ちしたから、起こすに起こせなかったよな。あれはナシとして……俺は別に、まこと一緒のベッドで寝ても良かったけどな」 「はっ……?」  何食わぬ顔で勇仁が爆弾を落としてきたので、真琴はつい過剰に反応してしまった。  同性同士だし何も過ちが起きないとでも思っているのかもしれないが、それは勇仁が軽はずみに言ってはいけないのだ。 「そんな嫌そうな顔するなよ」 「いやいや、だって男二人でこのベッドはないだろ」  勇仁の様子を見ていると、冗談で言ってるのは明らかだ。それが分かった真琴は、ベッドの狭さについて訴えて却下する。 「くっついて寝れば、ギリギリいけるだろ」
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